イベントの出店者募集で、「PL保険(生産物賠償責任保険)に加入していること」「加入証の写しを添付すること」が条件になることがあります。この記事では、まず当サイトが集めた全国の募集要項に保険がどう書かれているかを示し、そのうえでPL保険が何を補償し何を補償しないかと、加入証の写しを求められたときの用意の仕方を整理します。

要項にはどう書かれているか

当サイトが告知ページや募集要項(PDF・Word)の本文を取得できた全国の募集389件(2026年10月9日時点。募集要項の記事と同じ集計対象)のうち、PL保険や賠償責任保険に触れていたのは 51件(43のイベント、13.1%) でした。本文を取得できていない要項や、出店が決まってからの案内文書で求められる分は、この数に入っていません。件数はキーワードで数えた検出率で、見落としや誤検出があり得ます。以下の実例は原典を開いて確認し、募集ページまたは要項PDF(ページ番号)と確認日を添えています。

書き方は3つに分かれます(1つの要項に複数の書き方が出てくるものがあります。内訳の件数も保険に触れていた51件をキーワードで分けたものです)。

  • 加入が応募の条件(26件):「生産物賠償責任保険(PL保険)へ加入すること」(岡山県 勝央町 勝央町文化祭 2026年。要項PDF 1ページ、2026年10月9日確認)、「生産物賠償責任保険に加入していること。9月25日(金)までにコピーを提出してください。※10月10日(土)市民まつり当日に未加入の場合、出店不可」(兵庫県 尼崎市 尼崎市民まつり 2026年。露店募集要項PDF 1ページ、2026年10月9日確認)
  • 証書の写しを提出(32件):「生産物賠償責任保険(PL保険)等の保険証書の写し又は写真1部」(山口県 光市 虹ケ浜海岸キッチンカー出店事業 2025年。募集ページ、2026年9月25日取得)、「PL保険(生産物賠償責任保険)等証書の写し」(奈良県 香芝市 市役所敷地内のキッチンカー等移動販売 2026年。募集要項PDF 4ページ、2026年10月9日確認)
  • 加入を推奨(6件):「生産物賠償責任保険(PL保険)等への加入を推奨します」(京都府 舞鶴市 モルック日本大会 in 京都舞鶴 2026年。募集ページ、2026年10月7日取得)、「PL保険(生産物賠償責任保険)への加入などご検討ください」(三重県 鈴鹿市 鈴鹿フラワーパークフェスタ 2026年。募集ページ。要項PDFは2026年9月21日に取得したもので、2026年10月9日時点では公開を終えています)

証書の写しを求めるのは、市役所の敷地や公園、駅前でのキッチンカー出店の募集が目立ちます(奈良県 香芝市、静岡県 伊東市、茨城県 神栖市など)。まつりより期間が長く、市が場所を貸す形になるためと考えられますが、理由まで書いた要項はありませんでした。

飲食の出店に限って求める要項

21件は、保険を求める対象を飲食・食品の出店者に限る書き方でした。「食品を取り扱う出店者にあっては、食品(生産物)賠償責任保険等に加入していること」(岐阜県 美濃加茂市 みのかも市民まつり 2026年。要項PDF 2ページ、2026年10月9日確認)、「生産物賠償責任保険に加入している証明(飲食販売を希望する場合)」(兵庫県 宝塚市 宝塚市民祭り 2026年。募集ページ、2026年9月13日取得)。物販やハンドメイドの出店でも求められるかは、要項ごとに確認します。

「食品営業賠償共済」でもよいとする要項

4件は、PL保険の代わりに食品営業賠償共済でもよいと書いていました。「食品営業賠償共済、または生産物賠償責任保険(PL保険)に加入している者」(京都府 亀岡市 京都・亀岡バルーンフェスティバル 2026年。要項PDF 2ページ、2026年10月9日確認)、「飲食物を取り扱う業者は、生産物賠償責任保険(PL保険)または、食品営業賠償共済保険に必ず加入すること」(沖縄県 久米島町 久米島町産業まつり 2026年。募集ページ、2026年10月7日取得)。

補償額の下限

「対人1名あたり○円以上」のように補償額の下限を指定した要項は、今回調べた範囲では1件もありませんでした。どの程度の補償にするかは、出店者が保険会社と相談して決めることになります。保険の内容は商品や契約によって違うので、加入するときは約款と保険会社の説明を確認してください。

PL保険とは:売った物が原因の事故を補償する

PLはProduct Liability(製造物責任)のことです。PL保険は、自分が製造・販売・提供した物が原因で、他人がけがや病気をしたり、他人の物が壊れたりしたときの損害賠償責任を補償する保険です。

出店者に関係する例は、次のようなものです。

  • 提供した食べ物で食中毒が出た
  • 食べ物に異物が入っていて、口の中を切った
  • 販売したアクセサリーの金具で、子どもがけがをした
  • 販売した雑貨が原因で、お客さんの家で損傷が起きた

賠償金のほか、示談交渉や訴訟の費用を補償する商品もあります。補償の範囲は商品によって異なります。

PL保険が補償しないもの

PL保険は、製造・販売・提供した物が原因の事故を対象にしています。出店中に起きる事故には、対象外のものがあります。

  • テントが風で飛んで、通行人にぶつかった
  • 発電機のコードにお客さんがつまずいて転んだ
  • 調理中の油がはねて、お客さんがやけどをした
  • 商品の陳列棚が倒れて、子どもがけがをした

これらは、施設の管理や業務の遂行に起因する事故として、施設賠償責任保険などの領域になります。PL保険と施設賠償責任保険を組み合わせた事業者向けの商品を扱う保険会社もあります。

要項の中にも、この2つを分けて書いているものがあります。「生産物賠償責任保険(PL保険)及び施設賠償責任保険等、事故発生時に十分な対応ができる保険に加入していること。(加入が証明できる写しを提出)」(栃木県 鹿沼市 いちごのもり 2027年。募集ページ、2026年9月16日取得)、「加入している場合には、施設賠償責任保険等証書の写し」(静岡県 伊東市 市役所敷地内キッチンカー出店 2026年。募集ページ、2026年9月12日取得。募集要項PDF 3ページ、2026年10月9日確認)。

自分自身のけがや、自分の商品・車両・什器の損害は、賠償責任保険の対象ではありません。それは傷害保険や車両保険、動産保険の範囲です。

主催者の保険との関係

イベントの主催者が、イベント全体に行事保険などをかけていることがあります。それが出店者の販売した物による事故を補償するかどうかは、主催者の契約内容によります。要項で出店者にPL保険の加入を求めているのは、出店者が起こした事故は出店者の保険で備えてほしいという趣旨と読めますが、要項に理由が書かれていない限り、主催者の意図は分かりません。

保険料と補償額

保険料と補償額は、業種、売上規模、扱う商品、契約内容によって異なります。この記事では具体的な金額の目安は示しません。要項に最低額が指定されていればその条件を満たす契約にしますが、上に書いたとおり、当サイトが調べた要項には指定がありませんでした。保険会社や代理店に、出店の形態(キッチンカーかテントか)、扱う食品、出店の頻度を伝えて相談してください。

加入の窓口としては、保険会社・代理店の事業者向け賠償責任保険のほか、商工会議所・商工会や業界団体が会員向けに用意している団体保険があります。団体保険の有無や条件は、それぞれの団体に確認してください。

加入証の写しを求められたら

要項で添付を求められるのは、保険証券の写し、加入者証や付保証明書などです。保険会社によっては、加入後に証券が届くまで時間がかかります。募集を見てから加入すると締切に間に合わないことがあるので、募集前から準備しておくと短い募集期間にも対応しやすくなります。

保険期間が出店日をカバーしているかも確認してください。イベントが来年2月で保険が今年12月に切れるなら、更新の予定を書き添えるか、先に更新しておきます。

まとめ

  • 全国の要項389件のうち51件が保険に触れていた。「加入が条件」「証書の写しを提出」「推奨」の3通りで、飲食の出店者に限るものや、食品営業賠償共済でもよいとするものがある
  • PL保険は、製造・販売・提供した物が原因の事故の賠償責任を補償する
  • テントの転倒や転倒事故などは対象外で、施設賠償責任保険などの領域になる
  • 保険料と補償額は契約によって異なる。補償額の下限を指定した要項は見つからなかったので、保険会社に相談して決める
  • 加入証の写しを求められることがある。証券が届くまでの時間を見て、募集前に加入しておく

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