露店営業許可・臨時営業・キッチンカーの許可、どれが要る?
2026.9.11 公開 執筆:合同会社セキレイ
行政イベントの募集要項には、ほぼ必ず「食品営業許可を取得していること」という条件が書いてあります。ところが、この「許可」には種類があり、出店の形によって取るものが違います。初めての人が混乱しやすいところなので、整理します。
先にお断りしておくと、食品の営業許可は都道府県・保健所設置市ごとに運用が違います。名称も、有効期間も、提供できるメニューの範囲も、自治体によって差があります。この記事は考え方の整理で、実際に取るときは、出店する場所を管轄する保健所に必ず確認してください。
許可の種類は、大きく3つ
行政イベントで食べ物を出す場合、関係するのはおおむね次の3つです。
1. キッチンカー:自動車での飲食店営業許可
車両に調理設備を積んで販売するなら、「飲食店営業(自動車)」の許可です。車両そのものが営業施設として審査されます。シンク、給水・排水タンク、手洗い、冷蔵設備、床や壁の材質などに基準があります。
給水タンクの容量で、作れるメニューの範囲が変わるのがキッチンカー特有の点です。多くの自治体で、タンクが小さい(40リットル程度)と「簡単な調理」に限られ、大きい(200リットル程度)と工程の多い調理も認められる、という段階が設けられています。買った車の設備で、出せるメニューが決まると思ってください。
有効期間は5年前後が一般的で、更新が必要です。
2. 露店営業許可:テントや屋台での飲食店営業
テントや屋台で、その場で調理して売るなら、「飲食店営業(露店)」などの名称の許可です。まつりの屋台、たこ焼き、焼きそば、かき氷などがこれにあたります。
露店の許可は、施設が固定されていないため、提供できる食品が「簡易な調理」に限られるのが普通です。生ものは出せず、その場で加熱して提供するもの、あらかじめ許可施設で調理したものを温めて出すもの、といった範囲になります。細かい範囲は自治体ごとに一覧が公開されています。
有効期間は自治体により1年から5年程度。年に何度も各地のまつりに出る屋台の事業者は、この許可を持って動いています。
3. 臨時営業(臨時出店):行事のときだけの営業
「この行事の、この日だけ」出店する場合の、一時的な許可や届出です。名称は「臨時営業許可」「臨時出店届」「行事等における臨時的な食品の提供」など、自治体によってさまざまです。
もともとは、町内会の夏まつりや学校の文化祭で、営業許可を持たない人が一時的に食品を出すときのための仕組みです。主催者が行事全体としてまとめて届け出る形が多く、この場合は個々の出店者が許可を取る必要はありません。ただし、出せる食品はかなり限られ(加熱済みの簡易なもの)、営利目的の事業者には使えない自治体もあります。
営利で出店する事業者なら、臨時営業に頼らず、1か2の許可を自分で持っているのが原則です。募集要項に「食品営業許可を取得していること」とあるのは、そういう意味です。
どれを取ればいいか
出店の形から逆算するのが早いです。
| 出店の形 | 必要な許可の考え方 |
|---|---|
| キッチンカーで調理して売る | 自動車での飲食店営業許可(車両ごと) |
| テント・屋台でその場で調理して売る | 露店営業許可 |
| 許可を持つ店舗や工房で作った菓子・パン・弁当を、テントで売るだけ | 製造側の許可があれば、販売だけなら許可不要か届出で済むことが多い。ただし包装・表示・温度管理に条件 |
| ワークショップで食べ物を作る(親子でクッキー作りなど) | 参加者が自分で作って食べる形なら不要とされることが多いが、要確認 |
| 飲料の販売(缶・ペットボトル) | 開封せず売るだけなら不要が一般的 |
| かき氷・ドリンクをその場で作る | 露店営業許可(かき氷は別区分の自治体もある) |
「作るのはどこか」「その場で加熱や盛り付けをするか」「包装したまま渡すか」の3つで、だいたい振り分けられます。
許可は「取った場所」でしか使えない
見落としやすいのが、許可は取得した自治体の管轄内でしか有効でないことです。愛知県で取った許可は愛知県の保健所管轄内で使えますが、他県のイベントに出るなら、その県(または市)で改めて許可を取る必要があるのが原則です。
さらに、県の中に「保健所設置市」がある場合、そこは県とは別の管轄です。愛知県なら名古屋市、豊橋市、岡崎市、豊田市、一宮市が保健所を持っています。県で取った許可がこれらの市で使えるかどうかは、相互に認め合う取り決めがあるかどうかで決まります。近年は認め合う方向で調整が進んでいますが、実際の扱いは保健所に確認してください。
行政イベントの募集要項に「○○市(または○○県)の食品営業許可を取得していること」と管轄まで書いてあることがあるのは、このためです。
食品以外の出店に必要なもの
ハンドメイド作品、雑貨、衣類などの物販は、保健所の許可は要りません。ただし、次のような場合は別の許可や届出が関係します。
- 中古品を売る(リユースマーケット、フリーマーケットでの古着など):事業として継続的に行うなら古物商許可。一般家庭の不用品を個人が売る範囲なら不要
- 手作りの化粧品・石けんを売る:化粧品として売るなら製造販売の許可が必要。「雑貨」として売る場合の扱いは慎重に
- お酒を売る:酒類販売業免許。イベント会場での販売には期限付きの免許制度がある
- 火を使う(ろうそく、バーナーを使うワークショップなど):消防への届出が主催者経由で必要なことがある
- 音を出す・電気を使う:許可ではないが、要項で制限されることが多い
行政イベントは、会場が公園や道路、公共施設であるため、こうした点は民間より厳密です。要項の「禁止事項」の欄は必ず読んでください。
取得にかかる時間
営業許可は、申請してすぐ出るものではありません。申請、施設(車両)の検査、許可証の交付という流れで、申請から交付まで2〜4週間は見ておく必要があります。キッチンカーの場合、車両の改造がそもそも基準に合っていなければ、やり直しになります。
行政イベントの募集期間の中央値は3週間(当サイト集計)です。募集を見てから許可を取り始めても、間に合いません。行政イベントへの出店を考えているなら、募集が出る前に許可を取っておくのが順序です。
保健所への相談は早めに、具体的に
最後に実務的なことを。保健所は、営業許可について事前相談を受け付けています。「キッチンカーを買おうと思っているが、この設備でどこまでのメニューが出せるか」「この作り方の菓子を、イベントで売るには何が要るか」といった相談に、申請前の段階で答えてくれます。
車を買ってから、工房を作ってから相談すると、基準に合わず高くつくことがあります。図面や写真、メニュー案を持って、先に相談するのが結局は早い。行政イベントの主催者側も、許可の有無は必ず確認しますが、許可の中身(どのメニューまで出せるか)までは見ないことが多いので、そこは出店者の責任で守る必要があります。