搬入・搬出で嫌われる出店者、歓迎される出店者
2026.9.11 公開 執筆:合同会社セキレイ
行政イベントの当日、主催者が一番神経を使っているのは、開催中ではなく搬入と搬出の時間帯です。数十台の車が限られた通路を通り、決められた順に区画へ入り、決められた時刻までに駐車場へ出る。ここで段取りが崩れると、開場が遅れ、来場者の安全に関わります。
だから、主催者が出店者を「来年も呼びたいか」で判断するのも、この時間帯の振る舞いです。この記事では、搬入・搬出で主催者がどこを見ているかを、主催者側の視点で書きます。
搬入の段取りは「全員が守って初めて成り立つ」
行政イベントの搬入は、たいてい次のように組まれています。
- 搬入時刻を区画ごと、または区分ごとにずらす(奥の区画から先、キッチンカーは別枠など)
- 車両は一方通行で会場に入り、区画の横で荷下ろしして、指定の駐車場へ移動
- 荷下ろしの時間は10〜15分程度
- 搬入締切の時刻を過ぎたら、車両は会場に入れない
このやり方は、1台でも順番や時刻を守らないと、後ろの全員が遅れます。通路に車が止まったままだと、次の車が入れない。主催者は無線で「○番の車、早く動かしてください」と言い続けることになります。
嫌われる搬入
主催者側から見て、「困る」出店者の行動を挙げます。どれも本人に悪気はありません。
1. 指定時刻より早く来る 「早く来て準備したい」という善意ですが、搬入路がまだ開いていない、前の時間帯の車が通っている、スタッフが配置についていない。早く来た車が入口で待っていると、それだけで通路がふさがります。指定時刻の10分前より早く着いたら、会場外で待ちます。
2. 指定時刻より遅く来る 逆に遅れると、後ろの時間帯の車と混ざります。渋滞、道の間違いは起きるので、遅れそうなら本部に電話を1本。連絡なしの遅刻は、翌年に響きます。
3. 区画横で荷下ろしせず、その場で設営を始める 車を区画の横に止めたまま、テントを立て、机を並べ、商品を出し始める。後ろの車が入れません。荷下ろしは「荷物を降ろすだけ」で、設営は車を駐車場へ移動させてからです。
4. 通路に車を止めて離れる 「ちょっと本部に聞きに行く」で車を通路に置いたまま離れると、動かせる人がいなくなります。
5. 指定外の場所に車を止める 「近いから」と来場者用の駐車場や、隣の区画の前に止める。行政イベントの会場は公園や道路で、駐車の可否は主催者が道路管理者や警察と調整しています。指定外の駐車は、主催者の信用問題になります。
6. 区画からはみ出す のぼり、客側のテーブル、看板が通路に出る。「少しだけ」が10店続くと、通路が半分になり、緊急車両が通れない。主催者は消防と「通路幅○m確保」を約束していることがあり、はみ出しは注意せざるを得ません。
7. 発電機・電源を勝手に使う 「発電機禁止」の会場で発電機を回す、会場の電源に無断で繋ぐ、上限を超える機器を繋ぐ。ブレーカーが落ちると、他の出店者の冷蔵庫も止まります。
歓迎される搬入
反対に、主催者が「助かる」と感じる出店者の行動です。
- 指定時刻ちょうどに来て、荷下ろしを10分で終え、すぐ車を駐車場へ出す
- 荷下ろし中、スタッフの誘導に一言返事をする(「はい、分かりました」だけでよい)
- 区画の寸法を事前に確認していて、はみ出さない
- 電源の使用機器を申告どおりにする
- 隣の出店者と挨拶をして、境界を確認する
- 設営が早く終わったら、自分の区画で待つ(通路をうろうろしない)
派手なことは一つもありません。「決められたことを決められたとおりにやる」だけです。それができる出店者が意外に少ないので、できる出店者は覚えられます。
開催中に見られていること
搬入が終わって開場すると、主催者は本部で来場者対応と苦情対応をしています。出店者について本部に届くのは、たいてい苦情です。
- 「あの店の油の匂いがひどい」「煙が隣のテントに流れる」
- 「値段の表示がない」「言っていた値段と違う」
- 「店員の態度が悪い」
- 「ごみが散らかっている」
- 「呼び込みの声が大きい」「音楽を流している」
苦情が本部に届いた出店者は、その場で注意されることもあれば、されないこともあります。されなくても、記録には残ります。行政イベントでは、来場者は「市に苦情を言う」ことに慣れています。民間イベントより苦情が届きやすいと考えておいたほうがいい。
嫌われる搬出
搬出は、搬入よりさらに主催者の神経が張っています。理由は「来場者がまだ会場にいる中で、車を動かす」からです。
1. 終了前に片づけ始める 「売り切れたから」「客が減ったから」と、終了時刻の30分前から店をたたむ。来場者から見ると「もう終わりか」となり、イベント全体の印象が下がります。多くの要項に「終了時刻前の撤収禁止」があるのはこのためです。売り切れたら「完売しました、ありがとうございました」の張り紙をして、終了時刻まで区画にいます。
2. 終了と同時に車を入れる 終了時刻になっても、来場者は会場にいます。主催者が「車両進入を開始します」と放送してから、指定の順で入れます。先走って車を入れると、来場者の間を車が通ることになり、一番危険です。
3. 区画を汚したまま帰る 油の跡、ガムテープ、ペグの穴、残ったごみ。行政イベントの会場は公園や道路で、主催者は使用後に「原状回復」して管理者に返す義務があります。汚れた区画は、主催者のスタッフが後で掃除します。
4. ごみを会場に置いていく 来場者用のごみ箱に出店者のごみ(段ボール、廃油、食材の残り)を入れる。ごみ箱があふれ、処理費用が主催者持ちになります。
5. 撤収完了を伝えずに帰る 主催者は全区画の撤収を確認して会場を閉めます。黙って帰られると、確認に時間がかかる。
歓迎される搬出
- 終了時刻まで店を開け、終了後に片づけを始める
- 車両進入の放送を待って、指定の順で入れる
- 区画を掃除し、ごみを全部積む
- 本部に「撤収しました」と一言伝える
- 売上報告用紙があれば、その場で出す
翌年のリストは、当日に作られている
主催者は、当日の終了後か翌日に、出店者ごとの簡単なメモを残します。「時刻厳守」「区画きれい」「苦情1件(煙)」「終了前撤収」。このメモが、翌年の選考のときに「前年実績」として使われます。
つまり、翌年に案内が来るかどうかは、申込書ではなく、当日の搬入・搬出で決まっています。売上が少なくても、時刻を守り、区画をきれいに使い、苦情が来なかった出店者は、翌年も呼ばれます。逆に、売上が多くても、通路をふさぎ、終了前に帰った出店者は、呼ばれません。
行政イベントの担当者は、出店者の商売の上手さを評価する立場にありません。評価できるのは、「一緒に当日を回せる相手かどうか」だけです。それを見せる場が、搬入と搬出です。